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京都地方裁判所 昭和40年(ワ)105号 判決

判   決

原告

徳舛健次郎

右訴訟代理人

宮永明基

被告

橋口新太郎

右訴訟代理人

山本良一

(外二名)

主文

被告は原告に対し別紙目録第一記載の不動産(本件不動産)につき同第二記載の根抵当権設定登記(本件根抵当権設定登記)の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求原因として、

「一、原告所有の本件不動産について、原告を債務者、被告を債権者とする本件根抵当権設定登記がなされている。

二、原告は、被告主張二の根抵当権設定契約も債務引受もしたことはない。

三、仮りに、原告が、被告主張二の根抵当権設定契約と債務引受をしたとしても、原告は、免責的債務引受でなく、重畳的債務引受をした。

四、昭和三二年一〇月二八日開催された丹越木材株式会社債権者会議において、各債権者は、債権額の一割を昭和三三年二月末日までに支払を受け、残額を免除する、旨の決議がなされ、被告は、右決議を承認し、昭和三三年二月末日までに債権額金三、五三三、七七四円の一割の支払を受け、残額を免除した。

五、仮りに、被告が、丹越木材株式会社に対し残額債務の免除をしていないとしても、丹越木材株式会社および原告の被告に対する債務は時効により消滅している。

六、被告主張の四、五の事実は争う。

七、原告は、被告に対し、昭和四〇年四月二〇日の本件口頭弁論期日において、本件根抵当権設定の基本契約を解除した。

八、よつて、原告は被告に対し本件根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める。」

と述べた。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、

「一、原告主張一、四の事実は認める。

二、原告は、昭和三二年一〇月一六日、被告と、商取引、手形貸付、手形割引、証書貸付、支払承諾、立替金の各継続的契約を締結し、右契約に基づいて原告が現在及び将来において被告に対し負担する債務について、債権元本極度額金三、五〇〇、〇〇〇円の根抵当権設定契約を締結し、右継続的契約に基づいて、訴外丹越木材株式会社(代表者原告)の被告に対する木材買受代金債務金三、五三三、七七四円について、債務引受をした。

三、原告がした右債務引受は免責的債務引受である。

四、被告の丹越木材株式会社に対する債権は、原告の免責的債務引受により消滅したのであるが、被告は、原告の懇請に基づいて、原告の負担する本件抵当債務を軽減するため、形式的に債権額の九割免除の意思表示をなし、一割の支払を受けた。

五、原告は、その後毎年五、六回(最後は昭和四〇年一月一八日)本件抵当債務を承認しているから、本件抵当債務は、時効により消滅していない。」

と述べた。

証拠<省略>

理由

原告主張の一の事実は被告の認めるところである。

<証拠>によれば、被告主張の二の事実を認めうる。証人徳舛弘昭の証言および原告本人の供述中右認定に反する部分は採用し難い。

証人近藤雅睦、同森本幸雄の各証言および被告本人の供述中被告主張の三、四の事実に符合する部分は採用し難く、他に右事実を認めるに足る証拠はない。かえつて、<証拠>によれば、原告のした債務引受は重畳的債務引受であると認めるのが相当である。

重畳的債務引受がなされたとき、引受人と原債務者とはつねに連帯債務の関係に立つ、と解するのは相当でないが、本件のように、甲会社の債務について、甲会社の代表者乙が重畳的債務引受をしたとき、特段の事由のないかぎり、甲会社の債務と乙の債務とは連帯債務の関係に立ち、甲会社の負担部分は一〇割である、と解するのが、相当である。本件において、右特段の事由の主張立証がない。

したがつて、被告が負担部分一〇割の原債務者丹越木材株式会社に対しなした債務免除によつて、債務引受人である原告の被告に対する債務は消滅した(民法第四三七条)。

原告主張の七の事定は記録上明かである。

したがつて、本件根抵当権設定の基本契約は、被担保債務不存在の状態において終了した。

よつて、原告の本訴請求を正当として認容し民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。(小西勝)

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